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コンクリートのひび割れ

初期ひび割れについて

コンクリート打設後の比較的早い時期に発生するひび割れは以下があります。いずれもコンクリート構造物の完成検査時によく指摘されるひび割れです。

[1]温度ひび割れ

[2]乾燥収縮によるひび割れ

[3]沈みひび割れ

[4]不適切な打ち重ねによるひび割れ

 

温度ひび割れ

コンクリートは打ち込み後、水和反応により温度上昇で体積が膨張し、温度下降時に体積が減少します。
このときコンクリートの変形が拘束された場合に発生するひび割れを温度ひび割れといいます。
温度ひび割れには、内部拘束による場合と外部拘束による場合の2種類があります。

 

 

乾燥収縮によるひび割れ

コンクリートが乾燥をうけて収縮する際に発生するひび割れです。

打設後数10日以上経過後に発生するものが多く2〜3年後に収束するものが多くみられます。
開口部の角部や風通しが良く乾燥の影響を受けやすい場所に発生しやすいです。

 

沈みひび割れ

単位水量の大きいコンクリートを使用した際に見られるひび割れでコンクリートの沈降に伴い発生します。
発生箇所としてはセパレータの下部やスラブ構造においては上面の鉄筋に沿って発生する場合があります。

 

不適切な打ち重ねによるひび割れ

コンクリートの打ち重ねが適切でなかった場合に発生するひび割れです。 打ち重ね部に沿って水平方向に発生します。コールドジョイント※ともいいます。

コールドジョイントとは・・・

 

アルカリシリカ反応(ASR)によるひび割れ

アルカリ骨材反応とは、コンクリートの細孔溶液中の水酸化アルカリ(KOHやNaOH)と、骨材中のアルカリ反応性鉱物との間の化学反応を言います。一般には反応生成物の生成や吸水に伴う膨張によってコンクリートにひび割れが発生する現象をアルカリ骨材反応と言います。通常わが国でアルカリ骨材反応といわれているものは、一般にアルカリシリカ反応(ASR)をさします。

ASRが進むと、コンクリート構造物には、ひび割れ、ゲルの滲出、目地のずれなどが生じます。ひび割れの発生は、拘束の小さな無筋コンクリート構造物などでは亀甲状のひび割れが生じ、鉄筋コンクリート構造物では主筋方向に、部材両端が強く拘束されている構造物では拘束されている面に直角にひび割れが生じます。
最近、ASRによる膨張力によって、伸び能力の低い鉄筋曲げ加工部や圧接部周辺で鉄筋が破断する場合もあります。ASRを生じると、凍害や化学的侵食に対する抵抗性が低下し、塩害や中性化によりコンクリート中の鋼材が腐食する可能性があります。

>>>関連ページ:アルカリ骨材反応(ASR)

 

塩害によるひび割れ

鉄筋コンクリート中の鉄筋腐食による劣化現象の一つです。飽和水酸化カルシウム水溶液のpH値は12~13ですので,コンクリートは強アルカリ性を示します。このような高アルカリ環境の中にある鉄筋表面には酸素が化学吸着し、不動態被膜が形成されます。その不動態被膜によってコンクリート中の鉄筋は腐食から守られる(不動態化している)といわれています。しかし、コンクリート中に許容濃度以上の塩化物イオン(Cl-)が存在する場合、鉄筋表面の不動態被膜が破壊されてしまいます。コンクリート中には十分な量の酸素と水が存在するため、不動態被膜が破壊されると鉄筋は酸化反応を起こし、腐食が開始してしまいます。コンクリート中に塩化物イオンが存在する理由としては、
【1】沿岸部の海水飛沫や冬季間の凍結防止剤散布などによる塩化物の浸透(飛来塩分)
【2】海砂や塩化物含有混和剤の使用など、コンクリート材料に由来する塩化物(内在塩分)
などが考えられますが、いずれの場合においても限界濃度以上の塩化物イオンの存在により不動態皮膜が破壊され、酸素と水によって鉄筋腐食が進行することに変わりはありません。

鉄筋が腐食すると腐食箇所の体積が2.5~3倍程度に膨張するため、その膨張圧によってコンクリートにひび割れが発生します。そのひび割れを通じて水分、酸素、塩化物イオンなどの劣化因子の供給が容易になることにより、さらに鉄筋腐食が促進され、コンクリートはく離やはく落,鉄筋の断面減少を生じ、構造物の耐久性能、耐荷性能が低下していきます。これが塩害によるコンクリート構造物の劣化メカニズムです。

>>>関連ページ:コンクリートの塩害

 

中性化によるひび割れ

中性化とは、pHが12~13の強アルカリ性であるコンクリートに大気中の二酸化炭素(CO2)が侵入し、水酸化カルシウム等のセメント水和物と炭酸化反応を起こすことによって細孔溶液のpHを低下させる劣化現象です。大気中の二酸化炭素濃度は年々増加の傾向を示しており、それに加えて自動車等の排気ガス中の亜硫酸ガス(SOx)、それを含んだ酸性雨などもコンクリートを中性化させる原因となります。

高アルカリ環境のコンクリート中にある鉄筋表面には不動態被膜が形成されていますが、pHが概ね11より低くなると不動態被膜は破壊され、鉄筋が腐食環境下に置かれることとなります。鉄筋が腐食すると腐食箇所の体積が膨張し、その膨張圧によってコンクリートにひび割れが発生します。そのひび割れを通じて水分、酸素などの劣化因子の供給が容易になることにより、さらに鉄筋腐食が促進され、コンクリートはく離やはく落、鉄筋の断面減少を生じ、構造物の耐久性能、耐荷性能が低下していきます。
中性化はコンクリート表面から内部へ向かって進行していきます。その進行速度は、コンクリートの通気性、含水率、強度、セメントの種類、配合、施工条件等のほか、温度、湿度、二酸化炭素濃度等の環境条件にも影響を受けることが知られています。

>関連ページ:コンクリートの中性化